第41章 迷い子
「なぁ………お前、オレのこと抱いてみる?」
目覚めて、開口一番そう告げた。
寝顔を見てたらしい潤が、きょとんと目を丸くする。
その目元は、僅かだが赤く腫れてしまっていた。
好きなヤツを泣かせるとか、情けない。
そんな苦い気持ちを呑み込み、今度こそ手を伸ばす。
頬に、目元に、と指で優しく撫ぜてみた。
潤の表情が和らいだのを確認して、再び口を開く。
「そしたら、さ。オレがお前だけって分かるだろ」
「え、いや……翔さん?え、オレ、気持ち好くない?」
「違うよ。お前が特別だって信じてほしいの、オレが」
オレに触れられたまま、面白いくらい潤が狼狽える。
落ち着かせる為に抱き締めたくて、ちょっと強めに腕を引く。
あまり加減が出来なかったから、骨が当たって少し痛い。
だけども、それすら気にならない。
何なら、テンションが上がるくらいだ。
「今日は、オレの我が儘に付き合えよ。な、潤?」
「ぇ、えぇ……嫌な訳じゃないけど、さぁ、ホラ…ね」
朱に染まった顔で、潤がもごもごと言葉を濁す。
視線もあちこち動いていて、何とも可愛らしいと思った。
そんな可愛いコイツの、かわいくないとこ。
それは、愛情を疑うとこだと思うんだよ。
酷いよね、全く。ま、気長に?
徐々に直してけば良いし、ソレ込みで付き合ってるし。
そんなこんなで、今日も今日とて愛していきますか。
手始めに体ずくで伝えてみようか、とかね。
準備の仕方は分かるし、後は気合で乗り切れる。
いや、乗り切る。オレだってやれるとこ見せねぇと。
なんて考えていると、自然と笑みが浮かぶのが分かった。
「潤は服脱いで?今からオレを抱くの、分かった?」
「あ、はいっ!えッ?待って!ウソでしょ、ねぇ」
うるさい口を口で塞いで、潤の服を脱がせにかかる。
何だかんだ後輩気質が抜けきらないのも、可愛いよねぇ?
まぁ、取り敢えず。
風呂は昨日から用意してあるし、手伝ってもらえば初めてでもどうにか出来る筈だ。
折角オフなんだし、朝っぱらから不健全でイイじゃない。
あ、違うか。すこぶる健全なコト、だよね。
にやりと笑えば、潤が一瞬怯えたかのように見えた。
多分、気の所為だし。可愛いから大丈夫でしょ。
さてさて、どうしてくれようか。
オレは、久しぶりに思いっきり興奮していた。