第29章 腕と首なら欲望
side.M 【腕】
彼の腕の、筋肉が付いたラインを美しいと思う。
日焼けしすぎていようと、それでも綺麗だと思えてならない。
だから触れてしまうのも仕方ない。
それに、それが許される立場にあるんだから。使わない手は無い。
「リーダー、じっとしてよ」
「……好きだよなぁ、お前」
くすぐったそうに動くから、リーダーの肩を押さえた。
顔を窺い見れば、少しむくれている。
多分、気恥ずかしさもあるんだろうな、とは思った。
だけども、好きにさせてくれる。
だから、おねだりしちゃうのも無理はない。
「ね、凄いこと言っていい?」
「なに?」
「痕、付けたいんだけど」
オレの言葉に、リーダーはぽかんと口を開ける。
うん、まぁ。自分で言っといて、自分でも驚くような発言だもんな。
いつもは付けないように注意してるし、付けないでって言ってるし。
「いいけど、良いのか?」
「ん。本当はさ、いつも我慢してんの。けど、抑えきれなくなっちゃって」
返ってきたのは、そっか、という小さな呟き。
けれども、その口元は緩んでいて、何だか救われた気がした。
シャツの袖を捲って、静かにキスをする。
どうしてだか、歯を立てて噛み付いてみたくなった。
流石にやめたけど。
キレイな小麦色の上腕に、うっすら見えるキスマーク。
今はこれで良い。これ以上は駄目だ。
いつか、オレは思い切り噛み付いちゃうんだろうなぁ。
苦痛に歪むであろう表情すら、ご褒美のようだから。
そんな暴挙も、許してくれるだろうから。
オレは”待て”が出来なくなりそうな気がした。
少し、こわかった。