第29章 腕と首なら欲望
side.O 【首】
白い首筋は、きっと赤がよく映える。
職業柄、そう目立つものは付けられないけど。
知ってるのに、分かってるのに。
だからこそ、欲求は膨らむのかもしれなかった。
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絆創膏を貼りながら、今更ながらに謝る。
ホント、今更だ。
「ごめん。こんなとこに付けて」
「良いって。オレも止めなかったから、二人の責任だろ」
「けど、お前が酔ってるの分かってた」
昨夜のコイツは、強かに酔っていた。
俺も酔っ払ってて、そんな緩みきった頭で仕出かした。
寂しさと恋しさを肴に酒を呑んでて。
そんなだから、急に訪れたことに舞い上がった。
あぁ、バカだ。
何だかんだで松潤が甘いって、分かりすぎる程に分かってた。それも、ある。
「オレの方も、アンタが酔ってるの分かってたんだから」
その言い分は尤もだけど、何となく釈然としない。
決まりが悪い、と言うのかな。
妙な恥ずかしさみたいなものがある。
だって。酔ってキスマーク付けた、とかさぁ?
何かもう、はずかしい。初めての恋人に浮かれるガキか。
確かに、痕を残してみたいとは思ってた。
でも、日頃は付けないって決めてたし。多分、お互いに我慢してたんだ。
それなのに何でやっちゃうんだ、俺は。
「今日はインタビューだけだし。隠しとけば良いでしょ」
そう言って話を打ち切った松潤は、やけに嬉しそうに見える。
というか、本当にイイ笑顔しやがって。腹が立つな。
しょうがないから、とりあえず頬を軽く抓っておいた。
お前だって、やってみたい癖に。
抓られてもニヤニヤして、あまりに幸せそうだから。
口から出かかった言葉は呑み込んでやる。
別に俺だって、満足してない訳じゃあないしね。