第2章 こわれることを知らずに
side.S
「あなたオレのこと好きじゃないでしょ」
一息で、告げた。オレだけにとって重要なことを。
反応が返ってくるとは思ってないし、期待もしてない。
僅かに身じろぎして、声を発さないのも織込み済みだった。
あなたの好きと、オレの好きは恐らく違う。
「真面目な話、ホントにあなたのこと好きよ」
ぴくり、とまた微かな動き。
聞いてるなら、答えてくれてもいいじゃない。
でも、いざとなったらオレは耳を塞ぐかもしれない。
それなら、これでイイのか。
オレの気持ちを伝えるのは、もうあまりしたくなかった。
沈黙が怖くない訳ではないけど。
ニセモノに慣れたから、ホンモノがどうにも恐ろしいだけ。
そうでしょ?
「じゃ、寝よっか。おやすみ」
溜息に聞こえないように息を吐いて、シーツの塊に向かって笑った。
あなたが見てくれたら。顔を見せてくれたら。
もっと、ちゃんと、オレは笑えるのに。
儘ならないのが恋かぁ、なんて何度思ったことだろう。
「………おやすみ、しょうくん」
いつもより柔らかな声音の、その理由を知りたい。知りたかったんだ。
知りたがりな癖に、聞けずにいる腑抜けなオレ。
だから、背中を向けられたまま眠るしかない。
あなただから従うけどね、本当は、本当に寂しいよ。
「うん、おやすみ」
どうか、知らずにいて。
兄さんなんて呼んどいて、それ以上が欲しいこと。
あなたを奪えるなら、メンバーを傷付けられること。
全てちゃんと隠すから、こんなの知らずにいてください。