第14章 怖がりなもので
キスしようって寸前、珍しく潤が拗ねたように呟いた。
「こういうときくらい、目合わせても良いんじゃないっすか」
一瞬、思考停止。
そのたった数秒が、空気を変えていくのを感じる。
「……翔さんは、オレとじゃ、いや?」
「それは違う!そうじゃなくてさ、潤は悪くないんだ」
表情を曇らせたくなんてなくて。不安にさせたくもなくて。
だけど、正直に話せば、嫌な思いをさせるような気がする。
でも、黙ってると状況を悪化させるからと、オレは腹をくくることにした。
「オレさ、お前の目が怖いんだよ。キラキラしてて、こわい」
「どういう意味なの?そういうこと思ってたの、ずっと?」
「………オレの狡いとこ見透かしてるみたいで、いつか嫌われんじゃねえかって」
少し呆けたような顔で潤が見つめてくる。
オレが怖いのは、お前に嫌われることだって知らなかっただろ?
お前が憧れてるって気付いてから。お前が特別だって分かってから。
純粋に慕ってくれるお前と釣り合わないって思ってたし、実際そうだったと思う。
「ごめん。お前は、悪くないよ」
「酷いよ、翔さん。そんなの酷い」
「ホントごめんな。嫌な思いさせてたよな、ごめん」
別れたくないな、と思った。
頼りないところもカッコ悪いところも見せてるし、今度こそって悪い方向に考えてしまう。