第1章 手見禁
「ぁー………うわぁ……マジか、めちゃくちゃ恰好悪いってか情けない」
思わず俯いてへこんでると、ぽんぽんと頭を撫でられた。
それからオレの顔を上げさせて、大野さんが得意げにニヤリと笑う。
「んはは、分かった?一人の時間が無いと困るけど、俺だってずっとはイヤだぞ」
「うん、やっとでよく分かった。というか……あの、ホント、ごめんなさい」
「ま、お互い様だろ。ただ、お前の恋人が誰かって忘れんなよ?」
あぁ、どうしよう。このひとが男前すぎて、どうしよう。
なんて惚れ惚れしちゃうけど、抱き締めた体は僅かながら薄くなってる。
オレがいながら、何てことだ。
後悔しつつ今夜の献立を考えて、何が何でも連れて帰ろうと決意した。
それで、食べながらデートの予定を立てたい。
大野さんの指輪のサイズを直すのは、確定なんだけどね。
「大野さん、今日は絶対に一緒に帰るよ。お願いだから、絶対ね?」
「ふふ、うまいもの食べさせてくれんだろ?楽しみだなぁ」
満足そうな大野さんの手を、きゅっと握っておく。
みんなが来るまで短かった筈だけど、不思議と長く感じられた。
若干ほっそりした指が切なくて、けれど、とても幸せな心地だった。