第99章 ambivalence: other side
腕の中で気を失ってしまった相葉ちゃんを、どうにかソファに寝かせます。
いくら細いとはいえ、長身だから重いです。
よっこらせ、なんて呟いて、ソファの肘掛けに座りました。
胸を上下させる、その表情は、不思議と満たされてるように見えます。
そうだといいなって思ってるから、錯覚かもしれません。
都合の好い、解釈です。
「起きろよー……相葉ちゃんってば」
自分の声が拗ねてるな、と少しだけ可笑しいです。
折角、両想いだと分かったのに。彼は、気絶しちゃったのです。
それがきっと、嬉しさによるんじゃないことくらい、俺にだって分かってます。
相葉ちゃんは、どうしてか、土下座して謝りました。
泣きそうに笑って、頽れ、謝罪したのです。
あの笑顔は、あまり好きじゃない。
こわれてしまいそうな彼を見て、怒ることの出来る人間がいるでしょうか。
いや、まぁ、ニノか翔くんなら叱りそうだけど。
松潤は俺に近そう。
「なぁ、俺、ちゃんと傷付いてたか分かんねぇんだ」
「お前が言ったことは、少なからず思ってたことなんだよ」
「相葉ちゃんにとっての俺って、何だろうなぁって。特別じゃあないんだろうなって」
ぽつり、独り言ちます。相変わらず、彼は起きません。
反応しない相手に言うのは、何だか懺悔をしているかのような気分です。
俺としては、悪いことをした覚えは全く無いんですけど。
良いこともしてないだろうし。
聞いてほしい、とは思うんです。でも、秘密にしたいです。
底を知られては、飽きられるかもしれないから。
ミステリアスを装いたいのです。
うそです、ただの臆病者ってだけです。知っています。
長く、深く、溜息を吐きます。そして、いいことを思い付いたのです。
指通りの良い髪を掻き分け、額にキスをしました。
んん、と微かな声がしましたが、まだ起きてはくれません。
鼻にかかったようなそれが、俺の胸をずくりと疼かせます。あぁ、堪んない。
「まさき、起きてよ……キスしちゃうぞ、なぁって」
ゆっくり立ち上がり、彼に跨って、そっと腰を下ろします。
ぎし、と音がして、相葉ちゃんの眉間に皺が寄る。
起きるかもしれないですね。