第98章 ambivalence
バカですねぇ。
信用も信頼も失くしちゃいました。
もしかすると、オレを見て笑ってくれないかもしれない。
そう想像すると、立っている感覚が薄れていきます。
何だか肺が潰れそうです。
掌には脂汗、膝が笑って、オレは無様に崩れ落ちます。
「あ、ははッ………リーダー。許さないでね、ごめんね」
「っえ……あいば、ちゃん?」
「ずっと前から、おーちゃんが好きだったの。それでイジワル言ってたの。ごめんなさい」
今更のことを、謝ります。
それで済む訳が無いですが、その方がしあわせです。
馬鹿みたいに、いやまぁ実際に馬鹿なんだけど。土下座をします。
驚いている様子の大野さんをほっといて、自分の為に謝罪をしました。
許さないで、とは本音じゃありません。
恨まれていたいです。憎まれていたいです。
うそです、ホントは、ゆるしてほしいんです。
「特別になりたかったんだ。今まで、ごめんなさい」
「なに、言ってんの…………相葉ちゃん、ばかじゃねぇか」
そうです、あなたの言う通りです。
オレは救いようの無い、ばかなんですよ。
「んだよ、よかったぁ」
理解しがたいことに、あなたがホッとしたように笑うのが聞こえました。
頭がよくないオレなので、可笑しなことに、あなたを見上げて笑い返します。
「何やってたんだろ。俺だって、相葉ちゃん好きだし」
唇に降ってきた感触も、抱き締めてくる温もりも、きっと妄想なんだ。
オレは、しあわせなまま、目蓋を閉じました。
二度と目覚めなくたって構いません。
寧ろ、それが最高です。
どうか、このまま、死んでしまえますように。
気持ちの悪い笑みを、浮かべました。