第98章 ambivalence
「相葉ちゃんなんか、知らない。もうヤダよ」
「えぇ……オレはこんなに、だーいすきなのに」
「酷いこと言うじゃん。やだ」
上擦った声に、胸がきゅうっとなります。
息が、出来ません。
でも、オレはこれが好きなんです。おかしいですよね。
眉を下げて、ふるふると首を振るリーダーを、ぼうっと眺めます。
翔ちゃんは絶対にしない。ニノも松潤も当然しない。
オレは今、他のみんなが見られないものを見ています。
あなたは翔ちゃんと通じ合うし。ニノとじゃれてるし。松潤に甘やかされてる。
じゃあ”相葉ちゃん”とは、何をしているんでしょう?
ホラ、特別になれやしない。
「別にね、オレがいなくたって良いじゃん?リーダーはさ」
「違う。どうして、そんなこと言うの。誰かに言われたの?」
「言われてないよ。ただ、見てて思ったんだ」
「そんな訳あると思ってんの!なんで、だよ。なん、で」
ぽろり、と透明な滴が溢れだします。とても、キレイです。
胃の辺りが、ぎゅうっと締め上げられます。
何だか、吐きそうな気分。
数十回くらい、繰り返したでしょう。いつも平行線。
不毛ですよね。
大野さんは心優しいので、何回だって泣いてくれます。
その度に、オレは、欲しいものを手に入れるのです。
いや、嘘だけど。
「……何にも出来ない俺とか、うんざり。ごめんなぁ、相葉ちゃん」
抑揚の無い言葉に、背筋がぞっとしました。
こんなの、望んでません。
リーダーのそんな声音は、聞きたくないんです。
違うんです、こんなのが欲しいんじゃありません。
オレは、あなたが、泣いて縋ってくるのが欲しいんです。
唯一が欲しかったんです。
あなたが頼るのは、翔ちゃんで。安心するのはニノで。甘やかすのは松潤で。
その場所が全て欲しかったけど、奪うなんて出来ませんでした。
だから、今まで無かった場所を作ろうと思ったんです。