第86章 函蓋相応ず
「んァ!?あ、あぁ………………ッ!!」
頭上で舌打ちが聞こえた直後、ナカが熱いもので溢れる。
オレの腹も、自分ので濡れたようだ。あぁ、よかった。
待ち望んだ熱に、知らず緊張していた胸の内が和らいでいく。
これが、欲しかったんだ。全部、オレのにしたかったんだ。
くぷりと引き抜かれ、翔ちゃんが隣に寝転がる。
骨張った手で、ふわり、と頭を撫でられた。
汗でくっつく前髪を除け、労わるようにキスが降ってくる。
やっとそこで見えた目。
それは男っぽさを残しつつ、どこまでも優しい。
何だか、とても安心する。
きっとそうやって見てほしくて、だから焦っちゃったんだ。
「ふふ……しょーちゃ、すき」
また、舌を打つ音。
それから、あんまり煽るな、と。
翔ちゃんが呟くのが聞こえたような気がした。
どうしたのって尋ねたかったけど、重い目蓋は言うことを聞いてくれない。
起きたとき、覚えてると良いんだけど。