第86章 函蓋相応ず
side.A
「ひ、あ、ッあ」
腰をがしりと固定され、体の奥を何度も貫かれる。
口から漏れ続ける嬌声。こんな風にしたのは、あんただ。
繋がったとこが、ぐちゅぐちゅと鳴っている。
オレの弱い箇所ばかり狙われるから。
「だめぇ、も、ねぇ……ア!」
オレに覆い被さるその顔は、相変わらず見えない。
どうしても不安になっちゃう。翔ちゃんは、気持ち好いのかなって。
与えられる快感の所為で力が入らず、ただひたすら揺さぶられるだけ。
腕を上げられるようなら、表情を見ることも出来たかもしれないのに。
暗くして、と言ったけど。
前髪の影がかかってるのもカッコいいけど。
それでも物足りない、とか。ワガママだと思うかな。
「いきた、ぃ……も、一緒に、んぅ」
せめて、二人で。
ねだってはみたものの、翔ちゃんにその様子は全く無い。
それどころか、解放を待つソレを、きゅうと握られてしまった。
ドライの気持ち好さは知ってるけど、こんなんじゃ独りみたいだ。
早く楽になりたくて。それ以上に”愛”を感じたくて。
普段なら吐き出せない本音が、喉元までせり上がってくる。
「な、か…出して、あッ!しょおちゃ、で、いっぱいに」
言葉にすると余計に、ぽっかり穴が開いてるような感じだ。
ふと寂しいような、哀しいような気分になって。
それを隠す為に、緩んだ唇の端を上げて笑顔を作ってみた。
弱っちい感じだろうけど、でも、オレの寂しさなんて伝えたくない。
そんなの、翔ちゃんは、知らなくていい。
伝わらないのが、一番なの。
無理に作った表情が変なのか、一瞬、動きが止まった。
そして、オレの脚を掴みなおし、それから。