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小話【気象系BL短編集】

第77章 ユメもみない眠りを



side.N


あぁ、ねむい。気も漫ろに画面を眺め、欠伸を噛み殺す。
睡眠不足は、CGの敵よりも骨が折れる存在らしい。
セーブしたのちに、ねむいなぁ、とまた嘆息した。


「おーじーさーん。起きてるんでしょ」

「………起きてる。けど寝たいんだよ、俺は」


そうですか、なんて生返事をして、更に距離を詰めてみる。
それから、きゅ、と握った指は何だかひんやりしていた。
心地好いなぁと思いつつ、肩に頭を凭れさせる。
そう珍しくもないが、髪がサラサラ擦れるのが面白い。
ちょっとだけ楽しくなっちゃって唇だけで笑った。

本来、接触をあまり好まないリーダー。
くすぐったがりでもあるし、前に言っていたけれど多少の潔癖なんでしょう。
メンバーとか親しいひとなら気にしていないようだけど。
それでも潔癖症のような部分は、今も残ってるんじゃないかと思うときがある。
だから、じゃれることを許されていることに歓喜するんだ。

そして、喜びの後に訪れる虚しさに恐怖を覚える。
高い所から地面に叩き付けられる方が、恐らく痛みをより感じるだろうから。

その想像が付きまとう以上、俺は彼が齎す多幸感に怯えてしまう。
こうなったら、どうにもならない。
ただ、己の手で幸せをぶち壊すだけだ。


「ねぇ、大野さん。ワタシは、アナタの特別?」

「いきなりだな……ま、そうなんじゃない」

「あーヤダヤダ。どうせ、みんな好きな癖にねぇ」


自分でも分かってて、嫌らしい絡み方をした。
きっと小市民であろう俺は、気を紛らわす術をあまり持ち合わせていない。
面倒なヤツ、と小声で呟く大野さんに、どうしてか安堵する。

あんたの言った通り、俺は面倒極まりないヤツだ。
ちゃんと見張って、手綱を握ってて。
そしたら、役に立ってみせるよ。誰よりも、何よりも。





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