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小話【気象系BL短編集】

第76章 pierce





「なぁ、潤」

「ん……?くすぐったい、ふふッ」

「今度、ちゃんとピアス空けようか。オレがやるから」

「え、ホント?約束だよ。早いうちに、絶対ね?」


必死の様相に頷けば、潤は顔を綻ばせた。
コイツはきちんと不純で、そこそこ健全に不健全なヤツだ。
綺麗な見た目とは裏腹、人間らしい醜悪さもあるのだ。
だからこそ、愛おしくてしょうがない。
壊したくもなってしまう。


撫でてほしそうだから、と思い付いて頭を撫でてみる。
心底嬉しそうに微笑んだ潤は、昨日オレへのラブレターを焼いていた。
手紙が届いたことを知らせたのも、潤の前でわざと席を外したのも。
お前が焼くと思ったからだ。妬くのを想像したからだ。
半ば意識的であれど、従順でいる潤が愛しくて堪らない。


「お前に傷をつけて良いのは、オレだけだからな」

「うん、分かった。翔くんだけ」


自分で言った癖に、傲慢だなぁ、と内心で自嘲する。
それを知ってか知らずか、薄暗いモノを滲ませて潤は笑んだ。
本当、オレの好み知ってるよな。
そう白状するのは、もうちょっと先にしよう。

会話の間を埋めるように。我欲に正直になるように。
イイコと褒める代わりに、唇をくっつけるだけのキスをくれてやった。


物足りない触合いの最中、ふと思う。
折角なのに、勿体ないことをしたな、と。
傷痕を舐めるくらいしとけば良かったなぁ、と。





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