第67章 過ちを文る
side.A
好きだって言っちゃダメなんだって。
愛してるって言ったらいけないんだって。
けれども、触れることも抱き締めることも。
キスもその後も出来て。
それなら良いよって、それだけならいくらでもって。
あなたは言った。いつも通り、眉を下げた笑顔で。
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「抱いて、いい?」
「勿論。仕事出来るくらいにセーブしてね」
ずるい。とってもずるい。
リーダーがにっこりと笑って、オレの首に腕を回す。
あなたは、いつもそうだ。
そうやって笑って、キスをしてくれるから。
言いたいことの一つも言えずに、お腹いっぱい食べちゃう。
それで後悔するんだよ。
好きなのにって。付き合ってもいないのにってさ。
だから、今日も痕を残していくんだよ。
覚えててほしくて、忘れないでほしくて。オレを見てほしくて。
「いた………ふふ、痛いね」
「オレが悪いんじゃないよ、おーちゃん」
「うん、そう……そうだよ。だから、気にしないで」
赤く浮き出た歯形を、あなたが指でなぞって微笑む。
その顔があまりに愛おしそうで、オレは分からなくなる。
綺麗な掌をとって、オレの頬にそっとあてる。
どうしてだか、声を出して泣きたくなっちゃったから。
そんなワガママをゆるしてほしい、と思ったんだ。
本当に、そう思った。
もっと酷いことをする前に、拒絶してくれなきゃ困る。
そうじゃなきゃ、きっと、傷付けてしまう。
そんなこと、したくないんだ。そんな自分になりたくない。
「いけないのは、俺だからね?」
小さい子に言い聞かせるみたいに、リーダーは言った。
また、だ。今夜もまた甘やかされて。ゆるされて。
オレは共犯者にもなれないんだなぁって。
少し、さびしくなったんだ。
それを埋めるのは、あなたじゃないといけない。
だって、自分だけが悪いって、勝手に言うんだもの。
みんなに見せるような、少し泣きそうな笑い顔で。