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小話【気象系BL短編集】

第64章 自信家と自信家





キスをするとき、照れるのに強引なとこが好き。
いつだって優しくて、甘やかしてくれるとこが好き。
ちょっと頑固なところもあるけど、話そうとしてくれるから好き。
オレに愛されてるって自信持ってるとこも。けど、ちょっぴり恨めしい。

ぽちゃん、と音を立てて角砂糖が波紋を描く。
好き一つに、お砂糖一つ。思い付きで始めたコレは、毎回とても甘くなる。
コーヒーは甘くなって、けれど何故だか胸の内は甘くならない。


「好きって、こんなに……あまくなかったっけ」


溢した呟きは空気を揺らして、消えてった。
それから口をつけたのは、体に悪そうなくらいに甘いカフェオレ。
大体、収拾がつかなくなって、牛乳の出番が来る。

温かいミルクの匂いに、少しずつ気持ちがほぐれていく。
ほっとする。そういえば、大野さんはこういう匂いがする。
赤ちゃんみたいで、不思議と癒されるんだ。

そんな彼は、分かりにくくて分かりやすい。
そういうひとだから、惚れたんだと思う。
最近は無闇にハートの絵文字を使わなくなったらしい。
オレには相変わらずいっぱい飛んでくるけど。
特権かなぁ、なんて笑みが浮かぶ。


あぁ、また、好きが増えるね。


「早く、来ないかなぁ。帰ってこいよ、ばか」


ぽつり、とまた独り言。
近頃、入れ違いのように仕事へと出かけることが多い。
今日はオレのおはようと、彼のいってきますが同じタイミングだった。

顔を見て会話するけど。それでも、決定的に足りない。
会えるだけマシなんだろう。ただ、触れないのが堪えたんだ。

でも、今夜はキスして抱き合って。
そういうのがやっとで思う存分に出来る。愉しみだ。


「ぁー………何、スるかな。久しぶりだしなぁ」


想像する自分の顔がにやけていくのがよく分かる。
やっぱり触合いが少ないとメンタルが弱るよね。
なんて落ち込む度に開き直る。

オレはあのひとのものだし、あのひともそうだ。

一番に愛されている、と自惚れる。結構、嫉妬するし。
それに、あのひとはオレ以上に執念深いんだ。


「あのひと、オレのこと大好きじゃん。ねぇ?」


喉を焼くような甘さのカフェオレを飲み干す。
絶品ではないけど、もしかすると丁度好いのかもしれない。
大野さんもオレにはこれくらいだし。合ってるんだよ。





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