第58章 瓶詰めされた金平糖
「…………何だよ、勝手にオトナになんなよ」
「どうせ、また、いろいろ一人でやっちまう癖にさぁ」
「そのうち置いてくんだろ。なんにも、いわないでさ」
頬が濡れるのを感じて、泣いてるんだと他人事みたいに知った。
オレって、本当に恰好悪いなぁ。
こっちはもう”好き”が自分の一部なのに。叶わなくてもイイって程なのに。
お前は勝手に、一人で、苦しいって顔してさ。
好きです、付き合ってくださいって。オレの気も知らずに、酷いことじゃないか。
「………しょう、さん?それってさ。自惚れちゃう、よ」
迷子みたいに、でも確信を得たかのように。
オレの顔を上げさせて、潤がしゃくりあげながら笑った。
それがあまりにキレイだから、どうでもよくなった。
叶わないことを諦めるに足る。
苦しさのも情けなさも、ちっぽけな意地も、間違わせてしまうことさえ。
そう思えてしまうのだからコイツは怖い。
ちょっとだけ深呼吸して、好きだと目を逸らさずに言った。
心の中で、何かに、誰かに、すみませんと謝った。
間違いを正せないオレは、良い先輩には永遠になれないってことだから。
「オレと付き合って?潤」
改めて告げれば、破顔するお前。
誰にも見せないように、ずっと閉じ込めておきたいとすら考えてしまう。
それくらい、綺麗でキラキラしていたんだ。