• テキストサイズ

小話【気象系BL短編集】

第58章 瓶詰めされた金平糖



side.S


「憧れと、さ……混同してんだよ」


振り絞るような声だと思った。
傷付けるって、逃げなんだって分かってた。
それでもオレは年上だ。少なくとも昔は兄貴分だったから。
だから、間違わせたくない。間違ってほしくない。
意地なのかもしれなかった。



「何が、ダメ?男だから……オレ、だから?」


しょうくん。
掠れきってほぼ聞こえない大きさで、呼ばれた。
どくりと心臓が鳴る。そうじゃないんだと、首を横に振って否定した。

お前だから、いい。だからこそ、突き放さなきゃいけない。

何をどう言葉にすれば伝わる?
純粋さを置いてきたオレは、まっすぐなままのお前と通じ合うのだろうか。
それを考えなくたって、感情を伝えるのは不得手だし。
どうにも、少し恐ろしい。


慕われてることは知っていた。昔の名残のようなものだし、何となく。
それが恋愛感情だとは知らなかった。いや、知らないと思い込もうとしてた。


「お前がどうって話じゃない。それは分かってくれ」

「じゃあ、ちゃんとオレのこと見ろよ。少しくらい、さ」


弁明しようとするオレへと、潤が縋るように手を伸ばしてくる。
拒む訳にもいかなくて、放っておけば腕を掴まれた。
服に皺が寄るくらいの強さに、長い月日の流れを感じる。


すると、何故だろう。どうしてか泣きたくなってしまった。
そうして、いつぞやの反抗期を思い出す。

オレは、そう、あのとき。

イヤなことほど鮮明に蘇るようだった。
掴まれた腕をそのままに、ずるずるとその場にしゃがみ込む。
お前の戸惑う気配を放置して、襟元を強く握りしめた。
くるしくて、いやだ。
こんなこと、お前は知らないだろう?離れてたんだから。






/ 291ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp