第51章 露店の綿あめ
「ねぇ……どうしたの?何かあったんでしょ。誰?」
ふるふると首を振る。
誰かと問われたら、それは自分で。自分の所為で。
言いたくないから閉じ込めていたのに、言いたくもなってしまったんだ。
相葉ちゃんとは分かち合うから、俺は楽になれる。
なんてズルい考えだった。
心底いやだなぁと思う。
今更、間違えたんじゃないかと不安になる。
「違う。置いてかれる想像して、勝手に怖くなったの」
「誰もそんなことしないよ。オレらは一緒だもん」
「だから勝手に、だよ………だからね」
いっぱい大好きってして?
そう言って、俺はココアを飲みほした。
いつのまにか、飲み頃になってたみたいだ。
その丁度好い温かさに、胸の中までぽかぽかしちゃう。
あったかいなあ、と思わず笑った。
もっと俺の好きな温もりが欲しい。そう、相葉ちゃんが。
ちらりと傍の彼を見上げ、きゅっと手を握る。
すぐに握り返されて、頬が緩んだ。
分かり合えないけど分かち合える。きっと特別なんだよ。
「ねえねえ、お昼だけどさ。そういう意味で、イイの?」
「折角の休みだし。そんで、夜は美味しいもの食べよ」
「もう!大好き!!リーダーはやっぱ最強で最高だね」
痛いくらいに抱き締めてくれる、そういうとこが好きだ。
若干の苦しさよりも嬉しさが大きくて、俺も背中に腕を回してぎゅっとする。
それから、ちょっとした思い付きで、耳元で囁いた。
「お前の恋人だもん。当然♪」
「っ………オレ、どうなっても知らないからね」
ほんの少し朱に染まった耳に、軽く齧りついた。
相葉ちゃんは時たま面倒くさくなる俺を、変わらず甘やかしてくれる。
何だかお兄ちゃんみたい、と思って。
だけど、そしたらキスとかしづらいかな、と思い直して。
俺の、俺だけの恋人なんだと。
何物にも代えられない、しあわせを感じた。