第51章 露店の綿あめ
side.O
「相葉ちゃん、ちょっと来てー」
ふと思い立ち、キッチンにいる彼をソファに呼び寄せた。
相葉ちゃんが連れてきた、ふわっとしたココアの匂い。
いいタイミングだったと安堵する。
呼んどいてなんだけど、邪魔したくはなかった。
「なーにー?どしたの」
隣に座りながら、小首を傾げるのがかわいい。
不思議そうな表情を横目に、差し出されたマグカップを受け取った。
ふふふ、と笑ってみれば、彼特有の笑い声が聞こえる。
何か、しあわせだ。
両手で包み込んで、中を覗けば美味しそうな色。
黒でも茶色でもなくて、ココアの色合いだ。
当たり前なんだけど。
冷ますために息を吹きかけると、映り込んだ自分が揺れる。
ぐにゃりと歪む。それを見て、堪えきれなくなった。
あ、やっちゃった。
俺の顔はどんどん暗くなっていく。何かが、さみしいんだ。
そして困ったことに、それの正体を上手く表せない。