第48章 やわらかいひと
「翔くん、翔くんって………してた方が……いいの?」
「んー?無理しないで良いじゃない」
「頑張りすぎんなよ。リーダーっぽいこと出来ねぇけど」
ふわふわしてるからだ。
オレの心が弱くなるのは、その所為だ。
グラリ、と揺れる。
張り詰めていた何かが、切れてしまうような気がした。
きっと二人に甘えたら、楽になれる。
でも、だけど、それじゃ。
いつまで経っても、ガキのままだ。それは、こわいんだよ。
ぎゅうっと握り締めた掌に、ぴり、と痛みが走った。
確認すると、爪の食い込んだ痕。
それに溜息を吐くと、二人の気配が動くのが分かった。
「もう!痛いでしょ、それ。飛んでけーってしよっか?」
「相葉ちゃん、ナイス!じゃ、手、貸してみろよ」
「そういうの良いって。子供じゃないんだからさあ」
「でも、マジメな話。痛いのは、ほっといたらダメだよ」
「そうそう。慣れて普通になっちまったら面倒だろ」
両側から、手を握られて。ちゃんと心配されて。
何だか、泣いてしまいそうだった。
親切を軽くあしらったのに、何で優しくしてくれるんだろ。
比べちゃいけないって分かってるけど。けど。
あぁ、あのひとは、こうしてはくれないだろうに。
「ねぇ……もう少し、このままで良い?」
「いぇー!雅紀くんが癒しちゃうぞ」
「ふふ、俺も癒しちゃう」
ちょっとだけ、と言い訳をする。
背伸びもカッコつけも、今はおやすみにしよう。
だって、ふわふわしてるから。
オレだって、そうなってもしょうがない。
お兄ちゃんな相葉さんと、リーダーしてるリーダーを。
全力で独り占めしようと思った。
こんな贅沢、そう出来るものじゃないから。
だからね、仕方ない。癒されてあげるの。