第48章 やわらかいひと
side.M
「昔は翔ちゃんばっかだったじゃん。けんたっきー?」
「それを言うなら、倦怠期、ね。チキンは関係無いよ」
唐突に投げかけられた問いに、正直驚きはした。
尤も、かまされたボケに全て持ってかれたんだけど。
ニコニコしている相葉さんは、果たして何の意図があって聞いたんだろう。
そもそもどうして、このタイミングなんだ。
翔さんとは被らないだろう、雑誌の撮影の待ち時間。
わざと、かな?
「……よぉ、楽しそうだから混ぜて」
「いぇーい!おーちゃん、お疲れ。おいでおいで」
「リーダーもかよ……分かった。付き合っても良いよ」
リーダーが終わったのなら、あと少しで順番が来るし。
時間が潰せるなら、いいや。そんなことを考えて話に乗ることにした。
すると、二人がハイタッチをするのが見えて。
やられた、とこっそり嘆息した。
この二人はフィーリングが合うとか、そういうのだから。
目を見て何となく、で通じ合う。
オレもそういうの欲しかった、なんてくだらないか。
「で、戻すね。すげぇ懐いてたじゃん。今は良いの?」
「恥ずかしいんだろ、お前。かわいいなぁ」
ね、まつじゅん。そう言って、大野さんがふにゃりと笑う。
それを見たら、可愛いって言うな、とは言えなくなった。
毒気を抜かれるってヤツだ。
それに相葉さんも柔らかい表情だったから。
だから、しょうがない。
可愛いって言われても、許してあげる。
オレだって、可愛がられるのがイヤなんじゃない。
上手く、バランスがとれないだけ。
憧れも、羨望も、尊敬も。グチャグチャになって。
今までと同じようにする方法が、分かんなくなっただけ。
迷子になっただけ、だ。