第47章 2018/0214
【AさんとOさん】
side.A
「あーん」
「ん、あー……ふふっ」
雛鳥のように口を開けてるとこに、ケーキを運ぶ。
大野さんは頬張ってすぐ、ほっぺたを押さえて笑った。
それから、オレにもフォークで食べさせてくれる。
これはほっぺ落ちちゃうなぁ、と顔を見合わせて笑う。
普段より可愛くなっちゃて、ホントどうしようか?
「おいしーね♪」
「ねー♪」
一口ずつ食べさせ合って、それからは各々のペース。
分かってる。最初は、おふざけの筈だった。
その場のノリとか、そういうの。
それなのに、凄くドキドキしちゃうようになってた。
細い指がフォークを掴むのが、いいなぁ、とか。
偶に舌を出したり、唇舐めたりするよなぁ、とかさ。
食べられないかな、とかね。
ヘンかもしれないけど。でも、男だし仕方ないじゃん。
「あ、相葉ちゃん。チョコって媚薬効果があるんだって」
無邪気に、大野さんが笑う。内緒の話をするみたいに。
そういうハナシの前に、今日がバレンタインって覚えてるのだろうか。
女の子じゃないけど、二人きりでチョコレートのケーキを食べて。
ふざけてだけど、あーんとかしちゃって。
「……そっかぁ。じゃ、オレたちもムラムラするかも?」
「んふふー…かもね。イヤか?」
リーダーにそう尋ねられて、首を横に振った。
寧ろ、喜んじゃうよ。だけど、それ以上にへこむ。
付き合ってなんかないし、そもそも告白してないし。
それにさ、ううん、違う。
オレはラブだけど、きっとあなたは違うもん。
また黙々と食べ始めるリーダー。
可愛くて、守りたいと思う。おいしそう、とも思っちゃう。
食べちゃえるくらい可愛いなぁ、食べたいなぁ。
あーあ、もう、ホントに。
「はぁ……おーちゃん、食べちゃいたい」
そうそう、食べちゃいたいの。え?
ぽろっと零れちゃった言葉に、思わずフォークを落としてしまった。
カラン、と少し大きな音が鳴って。バチリと目が合って。
目尻を下げて、微笑むのが、見えて。