第46章 かわいくない
【MさんとSさん】
side.M
「翔さんだって……可愛いじゃん」
番組での食べっぷりを見ながら、ぽつりと呟く。
口いっぱいに頬張るさまは小動物のようで、庇護欲すら掻き立てられてしまう。
手料理を振る舞ってみたい。美味しいお店もいいなぁ。
出来もしないことが思い浮かんで、また一人で虚しくなる。
例えばメンバーも一緒なら、幾らでも誘えるのに。
いや、二人ってシチュエーションが無い訳でもないけど。
必死で何でもないって顔してんだよ。
はりきったら、下心がバレるだろうから。
可愛げのあるヤツになりたかったかも。
もしくは、可愛いって言われて素直に喜べるヤツ。
そしたら甘えたり簡単に出来るだろうに。
色々と、儘ならないねぇ。
「いやさぁ、可愛いって言われたいんじゃないよ?」
テレビの賑わいに、何となく後ろめたくなって独り言ちた。
傍からみると危ないヤツだけども、癖だし仕方ない。
なんて、誰にともなく言い訳をする。
自嘲して笑うと、丁度、画面の中でも笑い声が起こった。
こうしたい、こうなりたい。
理想ばかりが高くなって、遠くなっていく。
それで偶に振り返って、皆いるんだって安心する。
そういうときの一番だって、翔さんだし。
だからって言うのもヘンな感じになっちゃうけど。
ふとしたときに、甘えられたらなぁって思う。
甘い顔をしてほしい訳じゃない。凭れさせてほしいの。
焦って成長したものだから、もう昔のようにはいかない。
それから頼られたいし、弱いとこも見せてほしい。
言える訳も無くて、だから、夢にみちゃうんだろうね。
「オレって結局、何なんだろ」
零れた言葉が、やけに大きく聞こえる。
苦笑混じりにかぶりを振って、溜息を吐いた。
割とマジで考えてるけど、身長もそこそこある男だし。
それを抜いても結構ひねくれてるし?
ホント、可愛くないね。こんな妄想しちゃってさ。