第45章 はめられた指環

【OさんとMさん】



side.M

いかつい感じのシルバーリング。
それはオレのものなんだけど、何故か大野さんがはめてる。
貸してって言われて、良いよって答えたけどさ。

いや、ね？
てっきりデザインとかが気になったと思ったんだよ。
はめる為とは思わなかった。それに、左手の中指、ねぇ。
偶々そうしただけかもしれない。
だけどなぁ、あんまりはめるイメージが無い。


「ん……やっぱ似合わない」

「リーダーはもうちょい華奢なのが似合うんじゃない」


僅かに口を尖らせて似合わないと呟く。
だけどそう言いつつも、大野さんは外そうとはしない。

しげしげと指を眺め、蛍光灯に掌を透かして笑う。
楽しげな子供みたいで、それ以上にどこか寂しげな横顔。


つきり、と胸が痛む。
その原因も理由も、ずっと見ないふりをしてきた。
悪足掻きでしかないけど。



「ねぇ、松潤。何でこの指にはめてるか分かる？」

「何か意味でもあんの？」

「んー………気が向いたら、調べてよ」


やけに真剣な顔つきだったから、思わずオレは頷いていた。
そんなオレを見て、アンタがふっと微笑を浮かべる。
今まで見たなかで一番だと思った。綺麗、だった。

キレイで、吸い込まれそうで、消えていなくなりそうだ。

こんなとき、抱き締められたら。なんて、ね？

オレの胸をざわつかせる、その微笑みから。
ずっと前から変わらず、自分が燻らせてるモノから。
静かに、そっと目を逸らす。


まぁ、でも、とりあえず。まずは指のこと調べないとね。

オレの想いなんてどうでもいいし、要望に応えるのが先決。
そう考えられる冷静さが、恨めしかった。
つきり、とまた痛むことを嗤う。いたいなぁ。












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左手の中指→「好きです」