第2章 安土城
安土城に着くとしばらくして徳川家康と呼ばれる人物がやってきた。
でも何だか想像以上にそっけないというか、冷たい感じ。
ズバリ、顔は悪くないのに口が悪い。
もったいないイケメン…
『夜の森を1人でフラフラ徘徊したあげく転んで怪我とか、あんたバカなの?』
『信長様があんたを連れて来いだなんて意味がわからない』
『なんで俺が見ず知らずのあんたの怪我の手当てをしなきゃいけないんだ』
黙って聞いてりゃ言いたい放題。
でも図星すぎて返す言葉が見つからない。
でも私には私の事情ってものがあってですね…
なんて下手に言い返せば更に100倍くらい辛辣な言葉を浴びせられそうな気がする。
手際よく手当てする様子を見ている事しか出来なかった。
『はい、終わり。もう出血もしてないし、これなら跡も残らないと思う。応急処置をした三成に感謝しなよ』
『ありがとうございます、家康さん』
『家康。さんはいらない。家康でいい。敬語もやめて』
『わかった、家康。ありがとね!』
『面倒だからもう転ばないでよ』
『うん、気をつけるから』
笑顔で答えると、家康は赤くなった顔を隠すように下を向きながら部屋を出ていったのだった。
家康と入れ替わりで政宗が部屋に入ってくる。
『家康の奴、素直じゃないけどいい奴だから許してやってくれ。それと、俺にも敬語と敬称はいらないぞ』
『うん、わかった。それより何か用事があって来たんじゃないの?』
『ああ、信長様に会いに行くぞ。でもその前に着替えだ、着物を持ってきたからすぐに着替えろ』
『着物?……政宗、ごめん。着方がわからないの…』
『おい、お前、どこの姫だ?南蛮の衣装を着てるし、着物の着方がわからないって…』
『小さいときから着物を着ないで生活してるから…』
『変わった奴だな、ちょっと待ってろ』
それ以上の事は言えなかった。今は言わない方がいいと判断した。
政宗は私に着物を着せるため厨房にいる女中さんを呼び、着付けの間は部屋の外で待っていてくれた。
着物に合わせて薄く化粧も施してもらう。信長様に会うってだけで気合い入りすぎてないかな。
それよりこの後どうしよう。
ご飯、寝る場所、お金、何もないんだよね。
佐助君とも離れてしまったし。
頼るところがなくて急に不安になってしまった。