第38章 一乗谷城の戦い
『信玄、いつまで団子を食べているつもりだ。いい加減城に戻るぞ』
謙信の視線の先には美味しそうに団子を頬張る信玄の姿がある。
『まあ、待て。あとは帰るだけなんだし、そんなに急いで食べたら喉に詰まるだろう』
こちらの話を聞きながら黙々と団子を食べていた信玄に水を差し出すと、大人の余裕を感じる笑顔を向けられる。
『ありがとう。さすがは俺の天女、気が利くな。どうだ?今からでも遅くないから俺の所に来ないか?』
(うっ、警戒してたけど信玄様はさらりと口説いてくるタイプだった!)
『信玄、やはりお前から斬る』
謙信が再び姫鶴一文字を構えると佐助が慌てて止めに入る。
『謙信様、お忘れですか?今の信玄様には刀がありません。丸腰の相手ですよ』
『ならば佐助、お前を斬る』
『鍛錬の相手ならいくらでもしますから。目の前で直美さんと信長公が抱き合ってるのを見て苛々する気持ちは分かりますが、今は落ち着いてください』
『はあっ!?抱き合った?誰と誰がだって?』
幸村の反応が火に油を注ぐ。
『佐助の言う通り俺は機嫌が悪いのだ。幸村、やはりお前から斬る』
『意味わかんねー!ちょっ、謙信様!追いかけて来ないでください!』
刀を構えながら謙信が幸村を追いかける。
その姿をみんなで笑いながら見ていた。
それから間もなく休憩を終えて出発し、春日山城では景家からの熱烈な歓迎を受けたのだった。