第38章 一乗谷城の戦い
『幸、あまり遠くまで行く必要はない。気をつけろよ』
信玄が幸村に声をかける。
『わかってますよ。とりあえず行ってきますから』
幸村はゆっくりとその場を離れていく。
そしてその数分後、1人で走る幸村を見つけた佐助と小太郎が上手い具合に合流する。
『幸村、1人で何やってるんだ?もしかして道に迷ったとか…』
佐助が無表情のまま幸村に話しかけた。
『違うわ。馬を休ませるために川を探せ、探さないなら斬るって謙信様に言われてんだよ。なあ、ここに来る途中、どっかに川はなかったか?』
『うーん、川はなかったな。でも馬を休ませる場所ならあるけど…』
『なに!どこだそれ!すぐに教えてくれ!』
『城だよ。一乗谷城。ここからすぐだしちょうど今、本願寺の門徒たちが撤退を始めたから問題ないはずだ。城でゆっくり休ませたらいいんじゃない?』
『撤退?何がどうなってんだよ?まあ、場所としては悪くないな。さっそく3人を迎えに行ってくるわ』
幸村は謙信たちの待っている方向に馬を向ける。
『城までの道は私と佐助殿の2人で皆が安全に行ける様に守りましょう』
『そうですね』
『じゃあ、頼むわ。また後でな』
佐助と小太郎は一行を守るため先頭で馬を走らせながら再び一乗谷城に向かう。
謙信たちが一乗谷城に着いたのとほぼ同時くらいに、安土からの援軍がようやく本陣に到着したのだった。