第37章 来客
そしてその日の朝、景家の声に起こされる。
こちらに気を使っているのか襖は開けず、廊下から話しかける声が聞こえてきた。
『謙信様、お休み中のところすみません。直美様に来客です。すぐに広間までお越しいただけますか?』
(私に来客?誰だろう?)
『景家、お前の判断で良いがその客は敵か味方かどちらだ?』
少しした後、景家の返事が聞こえてきた。
『今は味方かと。やり合うのはちょっと遠慮したいお客様ですので、とにかく広間でお待ちしています』
『わかった。支度を終えたらすぐに向かう』
景家の足音が遠ざかると隣で横になっていた謙信がこちらを向いた。
『邪魔が入ったな』
微笑しながらそう言うと、そっと触れるような優しい口づけを落として体を起こす。
(謙信様っ……甘いよ、まるで夢でも見てるみたい…)
体を起こし、急いで支度をして謙信と共に広間に向かったのだが。
やはりこんな状況で自分に来客などとても考えられず、思わず廊下で立ち止まってしまう。
『直美、どうした。具合でも悪いのか?昨夜は無理をさせたつもりはなかったが……』
少し離れて自分の前を歩いていた謙信が心配しながらこちらに戻ってきた。
『ごめんなさい。まだここに来たばかりの私に来客だなんて心当たりがなくて……それでちょっと不安になってしまいました。一体誰なんでしょう』
こんなに不安になるならもっと自分で景家に確認するべきだったと反省する。