第36章 有言実行(R18 )
景家との囲碁勝負はもちろん初めてで、一体どのくらい強いのかと警戒しながら碁石を交互に置いていく。
『なかなか良い勝負になりそうです。流石、あの石田三成殿に教わっただけありますね』
景家がそう言いながら次の一手を考える。
『最初は碁石を置く場所すらわかりませんでした。碁盤に書かれた線は道。道と道が交差する所に碁石を置く、そこから教えてもらったんですよ』
『ふっ、まるで子供ですね』
碁石の音より思わず漏れた笑い声が部屋に響く。
『でも何も知らない状態から教えてもらったのが逆に良かったのかもしれません』
『確かにそれは否定出来ないでしょう。大人より子供の方が吸収するのが早いと言いますし』
『だからー!子供じゃないですよ!あ、景家さん、今回は私の勝ちみたいです』
話をしながら打っていたのが功を奏したのか、気づけば景家に勝っていた。
『貴女といると調子を狂わされますね。約束ですから何でも聞いてください。どんな事でも可能な範囲でお答えします』
最初から負けるつもりはないけれど、やはり景家に勝てたのは嬉しい。
謙信の家臣で武芸に優れ、頭の回転も相当早いと思っていたので普通に勝負して勝てた事は大きな自信になる。
『じゃあ、気になっていたことを聞いてもいいですか?』
『内容にもよりますが。何でしょう』
『謙信様の事なんですけど……どうして女性を避けてきたんですか?それってこのお城が女人禁制なのと関係ありますよね』
『その事についてはきちんとお話をしておこうと思っていました。良い機会ですので聞いていただけますか?』
景家のその言葉に思わず背筋を伸ばし姿勢を正した。