第34章 春日山城、再び
『それは…俺の寝顔が見たいと言うことか。いいだろう。そんなに見たいのならさっそく今夜見せてやる』
(え?見たいなんて一言も言ってないけど?)
謙信の顔を見上げても、わざとからかっているのか本気の発言なのか全然わからない。
『違いますよ!そうじゃなくてですね』
『何も違わぬ。寝ている姿をお前に見せてやるだけだ。変な噂が立つのを心配しているなら景家に言って人払いをさせる』
(逆!ちょっと待って、それ逆に噂になりますって!今さらだけどもしかして謙信様っていわゆる天然なの?そうなの?)
慌てて否定したものの、やはり謙信の表情からは何を考えているかわからない。
(あー、ダメだ、わからない…自分から質問しておいて収拾がつかないなんて不覚だったな)
『ではそろそろ城に戻るとするか』
『はい。皆さんが心配する前に戻らないといけないですからね』
今の謙信との会話の内容を景家に言ってもハッキリいって無駄だろうから、ここは佐助に助けを求めようと考えながら春日山城に戻ったのだった。