第33章 毛利元就の思惑
『光秀様!光秀様ー!!』
蘭丸は城の中を大きな声をあげながら光秀を探す。
少し進んだ先で反対側から光秀か歩いてくるのが見えた。
『いた!光秀様!文です!顕如様に書いてもらいました』
『もう文の準備が出来たのか、思っていたより早かったな。あの男、所詮は鬼になりきれないという事だな』
『光秀様、この文どうしますか?俺が届けてもいいですけど』
『いや。これは俺の家臣に届けさせる。お前は貴重な戦力だから、ここを離れられては困る。それから、これは地下牢の鍵だ。持っていろ』
そう言って光秀は蘭丸に鍵を手渡した。
『地下牢の鍵?どうして?』
『信長様は約束を違える事はしない。つまり、顕如を見殺しにすることはないということだ。もし万が一何かあったときにはお前が鍵を開けて逃げろ』
『……こんな大事なものを渡して俺がまた裏切るとか考えないんですか?』
『さあな。全ては信長様の決定の元で動いている。それだけは忘れるなよ』
光秀はそれだけ言うと蘭丸から文を受け取り、その文をまず小谷城に届ける手配を始めたのだった。