第33章 毛利元就の思惑
謙信と出掛けた直美が馬の背の上で寝ていた頃。
安土城の広間には信長、光秀、蘭丸の3人が集まっていた。
信長は家康と共に一乗谷城に向かうため、これからしばらくは光秀と蘭丸の2人が安土城に残ることになる。
そのため信長が不在の間に起こるかもしれない不測の事態とその対応について話し合われていた。
『蘭丸、毛利元就の最終的な狙いは何だ』
信長の問いに蘭丸が静かに答える。
『あの人は…自分を怪我させた信長様にただ復讐するのが目的です。そのためならいくらでもお金を詰んで何でもすると言っていました。
知り合いである顕如様を地下牢から出し、味方を一人でも多く増やそうとしていました。そのために直美を利用しろとも。
直美の事を戦女神だって噂を流していたのも毛利さん本人です』
『戦女神か、あながち間違いではないがな。直美はああ見えて賢いぞ。この乱世で刀ではなく知識を武器に戦えるのだからな』
『知識を武器に?』
もちろん蘭丸には信長のこの発言の意味する事はわからない。
『そのうち分かる。毛利は戦女神と噂された直美を巡って織田軍が常に戦となるように仕向けた、間違いないな?』
信長は一歩先を読んで確認しながら話を進めていく。