第32章 春日山城
久しぶりに訪れた春日山城は特に大きく変わった様子はなく、城で留守番をしていた幸村と景家が城門で出迎えてくれた。
春日山城に来ることが突然決まったため、直美が謙信たちと一緒にいることを幸村と景家は知らない。
当然、いきなり現れた直美の姿に戸惑いを隠せない。
『お前……本物の直美か?』
『直美様!!ついに謙信様の元へ来られる事を決断なさったのですか!さあ、どうぞこちらへ』
2人からほぼ同時に話しかけられ、思わず一歩引いてしまう。
『本物だから!ってちょっと待って!景家さん、違うんです。説明しますから聞いてください』
同時に2人に返事をし、今の状況を説明する。
『つまり織田軍の戦が落ち着くまでの間、春日山城に避難というか、遊びに来たってことか?』
幸村が理解できたなら景家にも伝わっているだろうと思い、話を進める。
『うん、まあそんな感じ。でもいきなり春日山城に行けって言われたから何が起きているのかよくわからなくて正直戸惑ってるんだけどね』
そんな気持ちを打ち明けると信玄がさりげなく直美の肩に手を置いて話に加わる。