第31章 蘭丸
『暗くなる前に行きましょう。直美さんの事なら心配いりません。怪我一つさせないと約束します』
佐助から促されると、信長たちは織田軍の兵たちが連れて来た馬に乗ってすぐに安土城に戻って行く。
『信長様!御武運を~!』
離れていく信長の背中に向かってそう叫ぶと、振り返らないまま手を振ってくれたのが見えた。
残されたのは直美と春日山メンバーの3人。
謙信が呆れたように本音を漏らす。
『思った通りのとんだ茶番だったな。信長に一対一で勝負する前に俺が相手してやったというのに』
『ああ。だがしばらく天女が一緒なのは悪くない。逆に喜ばしい事だ』
『信玄様、彼女に手を出したら安土から光秀さんの鉄砲が飛んできます。ダメですよ』
『やれやれ、春日山には景家もいるから監視の目が厳しそうだ』
(っ、そうだった!小谷城で会ったときにまだ謙信様との事を諦めてないって言ってた様な…)
『とりあえず、皆さんよろしくお願いします』
まさか本当に春日山城に行くことになるなんて。
御影の背中に乗って色々と考えながら走り出す。
こうして織田軍の戦が終わるまでは春日山城の居候として身を置かせてもらうことになったものの、あまりの展開の早さになかなか事態が飲み込めないのだった。