第31章 蘭丸
話をしながら歩いていると、家康がピタリと足を止める。
『ここ、曲がって真っ直ぐ行くと秀吉さんの御殿。曲がらないで行くと御殿は近いけど死角が多くて危ないからあの子には教えないように秀吉さんから言われてる。だから一人では通らないはず』
それはまさに蘭丸が直美に教えた近道の事だった。
『忍は死角が大好きな生き物なんです。行ってみましょう』
『自分、忍なんだろ?変な奴』
『家康さんにそう言われると光栄です』
『顔は喜んでるように見えないし、なんだか三成がもう一人増えたみたいな感じだよ』
『あの石田三成さんと俺が……感激です』
『あー、全然誉めてないから。行くよ』
家康を先頭に2人で、その道を歩き始めた。
秀吉の御殿への近道となっているその道は、途中に何本も大きな木があり、月明かりをほとんど遮っていた。
昼間も日影になる部分が多いのは簡単に想像出来る。
『家康さん、ここって昼間はどのくらい人が通るんですか?』
『昼間?かなり急ぎの用でもなきゃほとんど誰も通らないよ。城からすぐ近くだし忍だってここまでは来ないだろ……あっ!!』
家康が返事をしながら何かを思い出した。