第31章 蘭丸
『わー、全然変わってなーい!』
楽しそうにはしゃぐ蘭丸の後ろをついて歩く。
(これじゃ一体どっちが世話役なのかわからないじゃない!)
蘭丸を見失わないように必死に追いかけていくと、急に後ろから声をかけられた。
聞き覚えのある声だ。
『直美さん、元気?』
『佐助君!』
しばらく城下に留まると言っていた佐助の姿がそこにあった。
『謙信様たちは?あの後は大丈夫だったの?』
『ああ、もちろんだよ。実はその事なんだけど、謙信様の話によると安土の城下を離れた場所に伊賀の忍がうろついてるから気をつけて』
『うん、わかった。信長様に伝えるね』
『今は謙信様が面白がって伊賀忍狩りをしてる。信玄様は謙信様に巻き込まれてる感じだな。景家さんも数日前には無事に春日山城についたみたいだし、何か変わった事があればすぐに教えるよ』
そう言うと一瞬佐助の表情が険しくなる。
後ろを振り向くと、そこに立っていたのは蘭丸だった。