第30章 褒美
安土城に戻ると光秀はすぐに軍議に呼ばれ広間へ向かっていく。
(みんないないから書庫で馬に関する本でも探してみようかな)
書庫に向かうと片っ端から馬の本を探す。
乗り方から世話の仕方まで、参考になりそうな本を見つけると手当たり次第にページを開く。
(このクネクネした文字、まだ良くわからないなぁ)
時間のある時に読み書きの練習はしているけれど、まだまだ完璧ではない。
静かな書庫の中で羅列したクネクネ文字を眺めていると、次第にまぶたが重たくなってくる。
本を膝の上に置いたまま壁にもたれて気持ち良くうとうとしていると
『あっ!こんな所にいたー!!』
勢い良く襖が開き、蘭丸が書庫の中に入ってきた。
『わっ!!蘭丸君、どうしたの?』
『ねぇ、皆が軍議で忙しいからちょっと城下町に出掛けない?久しぶりに戻ってきたから懐かしくて』
突然の訪問と提案に驚きつつ、書庫で居眠りするよりは楽しそうだと思って立ち上がる。
それに蘭丸の事ももっと知りたい。
自分がこの時代に来る前の皆の話も聞きたかった。
『いいよ!今、支度するから待ってて!』
棚に本を戻して支度を整えると、蘭丸と一緒に城下町を散策することになった。