第6章 初めての出陣
部下たちがなかなか戻らないのを不審に思った政宗と家康は敵の兵に警戒しながら支城の裏手を目指していた。
『政宗さん、何か変じゃないですか?』
『ああ、俺もそう思ってた。橋が落ちた様子はない、部下も誰一人として戻ってこねえ。何人も向かわせたってのにおかしすぎる』
『罠でもあるのかもしれませんよ』
『上等だ。橋さえ落としちまえばこっちのもんだ。誰が何を仕掛けてるが知らないが後悔させてやるよ』
『本当に血の気が多いですね』
『誉め言葉として受け取っておく』
2人は刀に手をかけたまま一旦立ち止まる。
『ここを右に曲がれば城の裏です。行きますよ』
『ああ、さっさと終わらせて狼煙を上げるぞ』
2人が曲がった先に見えたのは待ちくたびれた表情をしている謙信と信玄の姿だった。
『独眼竜に徳川か、随分遅かったな。織田信長はどこにいる』
謙信が低い声で尋ねると、政宗が刀を抜いて斬りかかって行った。
『答える義理はない。今日は暴れていいと許可が出てるからな。思いっきり楽しませてもらうぜ』
謙信が素早く反応し、刀と刀が何度もぶつかり合う。
つばぜり合い、巧みに重心をずらした政宗が謙信の刀を受け流すが聞く耳持たぬと言わんばかりに謙信は踏み込んでいく。
謙信と政宗が戦っている横では家康と信玄が睨み合っていた。
『病で死んだはずなのに、どうやらもう一回死にたいみたいだね』
『死んだと思わせるのもまた戦略。三方ヶ原での決着を今つけようじゃないか』
『あれはこっちが勝ったんだけど。かかってくるなら容赦はしない』
信玄の大きく長い太刀が無造作に振り下ろされる。
家康は後ろに下がってそれを避け、素早く自分の刀を構える。
瞬きも出来ないほど激しい4人の攻防の最中、そこに現れたのは三成だった。
『政宗様、家康様、すぐに加勢いたします!』