第28章 佐助のターン
皆が城下町に戻った後、小太郎が直美の部屋を訪れていた。
『どうやら話がまとまった様ですね』
『はい。正確にはまとまらなかったんですけどね。明日の朝、ここを発つ事になりました』
『そうですか、あの方たちが護衛ならばきっと大丈夫でしょう。私はこんな形でも貴女に会えて嬉しかったですよ』
『それは私も同じです!だって小田原城ではさよならの挨拶も出来なかったでしょ?』
『そうでしたね。でも今回もさよならは言いません。私はこの場を今夜のうちに離れます。ですがいつでも直美様の味方であることを忘れないでください』
『小太郎さん、本当にありがとうございました。必ず里を立て直してください。また…会えますよね?』
『はい、きっと会えます。その時まで元気でいてくださいね』
会話を交わすと、さよならを言わない代わりに握手をした。
次に小太郎に会えるのはいつになるかわからないけれど、きっとまた会える時が来る。
そう信じて名残惜しそうに部屋を出る小太郎の後ろ姿を見送る。
翌朝、佐助と共にお世話になった隠れ家を離れ、一乗谷の城下町から安土に向けて出発した。