第27章 偽りの同盟
一乗谷城に急いで戻った朝倉義景と浅井長政。
まさかこんなに早くこのタイミングで謙信から同盟の話を持ちかけてくるとは思っていなかったため、頭の中はありとあらゆる期待でいっぱいだった。
足早に広間に向かうと、退屈していた謙信が庭で佐助を相手に鍛練という名の斬り合いをしているのが視界に入った。
『さすが軍神と言われるだけある。隙が一切なさそうだ』
『あの軒猿、なかなか腕が立つようだな』
朝倉と長政はそれぞれ言葉を漏らしながらその場に立ち止まり、感心しながら2人の様子を見ていた。
佐助が朝倉たちに気づくとそこで鍛練は終わりとなり、近くにいた信玄と景家も一緒に六人で広間へ向かう。
広間へ入ると浅井朝倉の2人と謙信たち4人は向かい合うようにして席についた。
『越後からわざわざお越し頂いたことを感謝いたします。こちらとの同盟をお考えになっているとの事ですが本当ですか?』
先に口を開いたのは朝倉だった。
『ああ。織田信長の首を狙うのであれば手を組んでおいた方がお互い何かと便利であろう。ただし、条件がある』
謙信が鋭い眼差しで浅井と朝倉を牽制する。
『その条件とは?』
『織田軍の元にいた戦女神だという女をこちらに引き渡せ。それだけだ』
朝倉と浅井にとって上杉軍の後ろ盾はかなり協力であるのは間違いない。
それに直美が謙信の元に行ったとしても、上杉軍と同盟さえ組んでいればこちらにいるのと同じこと。
戦で負ける事はない、朝倉と浅井はそう信じ込んでいた。