第5章 家康と金平糖
軍議が終わると三成が直美の部屋を訪ねた。
『三成くん、どうしたの?』
三成が直美の部屋を訪ねるのは実はこれが初めてだった。
『先ほどの軍議の内容をお伝えしに参りました』
わざわざ部屋にまで来て言うほど大事な事なのかと思わず姿勢を正す。
『光秀様の送られた斥候からの報告により、春日山に越後の龍と甲斐の虎の2人が生きていることの裏付けが取れました』
(私も目撃してるし今さら驚かないけどね)
『2人は同盟を組み、信長様の首を狙うため安土に近い支城に兵や武器を集めているようです。そこで信長様が自ら兵を率いて城攻めを行うことになりました』
『そうなんだ。戦は怖いけど信長様がいるから大丈夫なんでしょ?』
そこで三成の表情が曇る。
『そうなんですが、信長様が直美様も一緒に連れて行くと言っておられまして…皆さん反対されたのですが、決定事項という事で聞き入れてもらえませんでした』
『私が戦に……』
『出立は3日後となります。直美様を戦場にお連れする事になり申し訳ございません。こうなった以上、貴女を全力でお守りいたします』
(真剣な眼差しでそんな事言われたら嫌だって言えないよ…)
『三成くん、知らせに来てくれてありがとう』
『私は書庫で今回の戦の戦略を立てますので、何かありましたらいつでも頼ってくださいね』
三成はそういうと爽やかな笑顔と共に直美の部屋を後にした。
こうなった以上腹を決めて戦についていくしかない。
しかし本物の戦が目の前で始まると思うと緊張でなかなかぐっすりと眠ることが出来なかった。
酷い寝不足の状態だったが無情にも時は流れ、いよいよ戦に向けて出発する朝を迎えたのだった。