第21章 富山城、再び
信長は直美の部屋に戻るとすぐ横に座り、じっとその寝顔を見つめる。
(傷つけただけで何もしてやれなかったな)
もし直美が未来に戻る事を選ぶなら止めるつもりはない。
しかしそれは明らかに信長の本心とは違うものだった。
『信長様?』
いつの間にか目を覚ました直美の声で我に返る。
『ああ、すまぬ。考え事をしていた』
そう言って微笑む信長の瞳はどこか寂しそうに見える。
『聞かせてください、全部。信長様にそんな目で見つめられるととても不安になります』
『随分と人の気持ちを読むのが上手くなったものだな、光秀のおかげか』
『誤魔化してもダメですよ』
目と目が合った後、沈黙の時が流れる。
そして意を決した様に信長が話し始めた。