第20章 毛利元就
『……っ、痛っ!!』
左肩に鋭い痛みが走り、そのまま床に倒れ込む。
死角から現れた兵から信長を庇うためにとっさに駆け寄ったものの、刀を持つ者の前には無力だった。
『直美!!』
信長が自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
異変に気づいた謙信と光秀も戦いながらこちらを見ている。
(大丈夫、生きてる。ちょっと血が出て痛いだけ)
心配かけまいと、精一杯の笑顔を信長に向けた。
目の前で起きた光景を見て元就が一瞬力を抜く。
その隙に信長は元就から離れ、死角から現れた兵をすぐに斬り伏せた。
刀をさっと一振りして血を払うと後ろ手に縛られていた直美の縄を切り、急いで体を抱き起こす。
『助けられたのは2度目だな。今終わらせる。共に帰るぞ』
『信長様……安土に…帰りたい…負けないで……』
そう伝えた直後、信長の腕の中でぷつりと意識が途切れてしまった。