第20章 毛利元就
目を覚ました直美はゆっくりと目を開け、知らない部屋の中にいる事に気がついた。
(ここはどこだろう…潮の香り?海が近いの?)
後ろ手に縛られてはいるものの、大きな怪我はなく着物が乱れた様子もない。
『起きたか。俺に刀を向けた女はお前が初めてだ。なかなか面白い女だな』
どうにか体を起こすと元就が笑みを浮かべながら近づいてきた。
『聞きたい事がある、ちょっと話でもしようぜ』
目の前まで近づいてくると強引に顎を掬われ至近距離で目と目が合った。
『あなたと話す事なんか何もありません』
『何も答えないで黙ってるならここで今すぐこの前の続きだぞ?』
耳元でそう囁かれて思い出したのは春日山での記憶。
あの時はいきなり唇を奪われた。
それも佐助が見ている目の前で。
『絶対嫌です。触らないでください!』
『なら答えろ。上杉謙信は女嫌いで有名だ。なのに何故急にウサギを大事に飼い始めた?』
『ウサギを?……まさかですけどそれって私の事ですか?』
質問の意図がよくわからず質問を質問で返す。