第17章 富山城
富山城の城下町に一番先に着いたのは光秀と蔦花だった。
『富山城で数日間だけ留守の女中の代わりとして働く手はずを整えておいた。噂話でもいい、上杉武田の情報と直美の状況を知らせてくれ』
『わかりました。怪しまれないようにしながら直美ちゃんとの接触も試みます』
光秀は三成から借りた眼鏡をかけ、菅笠を深く被って変装する。
『蔦花殿の兄の振りをして城門まで送ろう。城に入ったら教えた通りに上手くやってくれ』
城門まで来ると門番の男と話し、蔦花だけが城の敷地内へ入る事を許された。
光秀と蔦花は目を合わせて笑みを交わすと、何も言わず、振り返らずにそれぞれの進む道に向かって歩き始めた。