第16章 増山城
『はっっ!なんで私お布団の中にいるの?あれ?ここ、どこ?』
パチッと目を開けると壁にもたれかかって座っている謙信と目が合った。
『お、おはようございます?』
状況が全くわからない。
『あの、謙信様、ここは?』
『ここは俺に用意されていた部屋だ』
『……へ?えっ?ええーっ!謙信様のお部屋って一体どういう事ですか!?』
『覚えていないのか?』
『恥ずかしながらすみません。お酒を飲んで楽しくなって、でも何故か泣いた様な気もするんですが細かい事までは……』
どうしてこの部屋にいるのかは全くわからなかった。
そしてニヤリと笑う謙信の言葉に驚愕する。
『昨夜はお前が俺を求めたのだ』
(は?嘘でしょ?嘘だと言ってー!!)
『ま、ま、待ってください』
頭が真っ白になり、そこから先の言葉が出てこない。
『本当に覚えていないのか?ならば教えてやる。酒に酔ったお前は笑って泣いて、そしてあろうことか立ったまま寝たのだ。だからこの部屋に連れてきた』
『す、すみません……』
穴があったら全力疾走で入りたい。
きっと謙信から伝わる温もりが気持ち良くてそのまま寝てしまったのだろう。