第15章 再び城下へ
春日山城では姿を消したまま城に戻らない佐助と直美を皆で心配していた。
謙信が幸村、信玄、景家を広間に集め、これまでに入った情報をまとめている。
『2人で城下に向かって歩いて行ったのを目撃されてる。何かあったんじゃねーか?』
『幸、昨日城下に行った時に何か変わった様子はなかったのか?』
幸村は信玄からそう聞かれ、ウサギを捕まえた男の事を思い出した。
『そういえば戦慣れしてそうな奴が城下にいました。しかも俺と佐助を見て睨んでたような…ま、気のせいかもしれないですけど』
『幸はそいつに見覚えはあるのか?』
『いや、全くない。これはただの直感だけど、この辺に住んでる奴じゃない気がする。雰囲気が他と違うっつーか、あまりにも堂々としてたな』
それを聞いて謙信が景家に尋ねた。
『景家、お前の見立てはどうだ』
謙信たちが小田原にいて不在の間、城の留守を任されていた景家が城下の様子を語り始めた。
『はい。謙信様たちが小田原に向かわれた直後、直江津の港に商船が入ったとの報告がありました。ただ、城下では何も騒ぎは起こっていません。見慣れない者ならその船でやって来た可能性が高いかと』
『景家は港に行き、今すぐその船がどこから来たのか取引先も含めて調べろ。信玄と幸村は城下に出て2人を探せ』
謙信の指示は早い。
普段は寡黙でもいざという時には的確な指示を出す。
謙信が部下に慕われる理由の一つだった。
『2人に何かあれば斬る』
その一言でその場は解散になった。