第3章 天守
話すなら今だろう、そう思った。
信長様だけに言うつもりだったけど、秀吉さんにも聞いてもらえば警戒心を解いてもらうのに好都合だ。
信じてもらえるのが前提だけど。
もしも信じてもらえなければ、この場で斬られるかもしれない。
ぐっと手を握りしめ覚悟を決めて口を開いた。
『私の事でお二人に話があります。信じてもらえるかわかりませんが…』
『話してみろ。だが言えないことは無理に言わなくてよい』
信長様の一声に安心して、肩の力を抜く事ができた。
『私は約500年後の未来から来ました。京都を旅していたら突然雷が落ちて…目を開けたら今の時代の本能寺にいたんです。そこで信長様を助けました』
しばらく沈黙の時が流れた。
二人とも無表情でこちらを見つめている。
『こんな事簡単には信じてもらえないかもしれません。でも本当なんです!そうだ、洋服のポケットの中にスマホやお財布があるのでそれを見てもらえれば!』
必死に説明しようとする私を見て、信長様が笑いながら口を開いた。
『はっ!面白い。では貴様の知る未来はどうなっている』
『少なくとも500年後の日本では刀を持つ人はいません。戦のない平和な国です。皆普段は着物ではなく洋服を着て毎日仕事をしています』
『政宗と光秀に聞いた。着物の着方も知らないんだってな』
『今、安土城にいる武将の皆さんは全員私の時代では有名で、名前を知らない人はいません。皆さんのおかげで未来の日本は戦いのない国になったんです』
『ますます面白い。秀吉、直美、未来から来た事は他言無用だ。何故かわかるな?』
私より先に秀吉さんが答えた。
『直美が歴史を知っているからでしょう。つまりこれから先に起こる戦の結果を知っているということ。直美を利用して上手く聞き出せば負ける戦にも勝てる、そう目論む輩が必ず存在する。だから未来から来たことは他言無用という事ですか』
『その通りだ。死ぬはずの者が生かされ、日ノ本が今以上に荒れるであろう。未来の平和が消えて無くなるかもしれんな。どこから情報が漏れるかわからん。皆に知られぬよう努めろ』
私が未来から来たことは極秘中の極秘扱いになった。