第13章 それぞれの戦い
銃を向けられた直美と再び響いた銃声。
天守にいた誰もが最悪の事態を覚悟したのだが、幸村が直美の体を突き飛ばし、間一髪のところで銃弾を避けることが出来た。
『あぶねーな。ちゃんと守ってやるから背中に隠れてろって言っただろ』
『ご、ごめん』
(助かったんだ…)
この時、氏政が一瞬隙を見せたのを小太郎は見逃さなかった。
持っていたクナイを氏政の右肩に深く突き刺すと、銃が音を立てて床に落ちる。
床に落ちた銃を幸村が蹴り飛ばすと氏政は膝をついてその場に崩れ落ちた。
『俺の負けだな』
それは何度も聞いたことのある台詞だった。
しかし今までで一番重たい負けである事に間違いない。
『もうじき織田信長か上杉武田がこの天守にやってくるはずだ。先に来た方にこの首をくれてやる』
そう言って遠くを見つめる氏政にかける言葉がすぐには見つからなかった。
『ああっ!大変!』
何かを思い出した様に直美が小太郎に駆け寄る。
『小太郎さん、急いで止血します!痛いと思うけどちょっと我慢してください!』
『すみません。感謝します』
持っていた手拭いを裂いて包帯代わりにした。
小太郎には化膿止めや熱冷ましの薬が効かない。だから少しでも体力を奪われないために出血を最小限に抑える必要がある。
家康から教えてもらった手当ての方法が役立った。
(良かった。強引に押しかけて無理矢理教えてもらった甲斐があったよ)