第13章 それぞれの戦い
氏政は北条軍の兵を増やすため近隣国の大名との謁見を重ねていた。
しかし父親の氏康と弟の氏照があまり間をおかずに亡くなっているため、氏政に対する近隣国の不信感は相当なものになっていた。
なかなか一つ返事で北条軍に協力してくれる国は見つからず、それどころか今が絶好の機会だと寝返りを企む国も出てきている。
氏政は焦りと苛立ちでいっぱいだった。
そんな状態で迎えた小太郎の不在4日目。
ついに事態は動き出す。
朝から厚い雲に覆われていた空からは今にも雨が降り出しそうだった。
いつもの様に廊下で見張りをしていた氏政の部下が血相を変えながら氏政の部屋に走ってきて報告する。
『氏政様!緊急事態にございます!』
『騒々しいぞ、何事だ』
護衛のため廊下に控えていた幸村と、氏政の隣で書物を読んでいた直美にも緊張が走る。
『城門に上杉謙信と武田信玄が現れました。強引に敷地内に突入しようとしています』
『上杉と武田だと?先代の時の様に早々に撤退させろ。殺してもかまわん。全兵力を動員して対応しろ』
(幸の言った通りだ。これで上手くいけばここから脱出出来るんだよね)
『それがですね、同時に城の西側に織田軍の兵が現れまして、そちらにも兵を向かわせましたが一部がすでに敷地内に入ってきております』
(えっ!謙信様たちだけじゃなくて織田軍も来てるの?)